「池上彰が世界の知性に聞く どうなっている日本の経済、世界の危機」

池上彰さんによるインタビュー集。

前半は、これから世界はどうなるのか、どうすればいいのかを探るための3人のキーマン。
後半は、なぜ日本はこうなってしまったのか、どこに問題があったのかを探るための、時代を動かしてきたキーマンたち。

それぞれとても興味深く、面白く読めた。
トマ・ピケティ、岩井克人、中曽根康弘、今井敬、八城政基、塩川正十郎各氏のインタビューは特に面白かった。

この本が支持されている理由には、「しっかりと情報を判断した上で行動の起こせる市民を生み出すの役立つ本だ」という評価もあったのでしょう。
トマ・ピケティ

ここにも秘策はありません。結局は倫理の話に戻るのですけど、江戸時代の財閥の家訓にあった「浮利を追わず」。つまり何百年の伝統の中にある知恵を大切にするしかないのではないかな、と。
-利潤追求だけじゃなくて、長期的に組織を存続させることや地域社会の中で支えになることが大事であるという意識の企業が日本にはたくさんあるんです。
岩井克人

 

岩井さんの著書が2冊手元にあるのだが、一冊は消化不良、一冊は積ん読のままだ。改めて向き合ってみたい。

個人的に、自民党政権がいいと思ったことは一度もない。元総理の中曽根さんに関しても、いい印象を持ったことはない。
もちろん、彼が現役だった頃はまだまだ子供だったわけだから、彼に対する評価(印象)が果たして真っ当なものなのか怪しいのだが、池上さんのインタビューを読んでみると、意外にも好印象を持った。
一般的な主にマスコミを通してのこれまでの現代史(いい意味ではない)、はさておき、少なくともこの時代の自民党の代議士はそれなりの信念を貫いていたんだなあ、という感慨を持った。
その頃の自民党は、党内でも様々な派閥で喧喧諤々の意見が飛び交っていた。決して、僕個人が感じていたようにアメリカに迎合してばかりでなく、いかに植民地支配的関係から現実を見据えた交渉を勝ち取ろうと努力されていたらしい。(ただし、それらが結果的には今の日本の現状を作り出してしまっていることも、また事実だ)
無論、今の政治家も同じことを言うかもしれない。しかしそんな気概はまったく見えてこない(安保法案や改憲こそその現れだ、というかもしれないが、はなはだ見当違いだろう。戦前に戻ってどうする気だ?歴史に学ぶ、反省してこそ未来がある)し、これから数十年後、同じようなインタビューを安倍さんが受けたとしても、それを聞いて同じように感じるのか甚だ疑問だ。

戦後の廃墟の中で、日本の将来像を考えてみると、やがてエネルギー問題で死命を制されると、私はそう思っておりましたから、原子力の平和利用は、政治家として自分の生涯をかけてきたテーマと言ってもいい。
だからこそ、と言うべきか、事故が起きたことを含めてこれまでの経過を仔細に見返して、後輩のために自分の成功や失敗を含めた感想を言うものを最後に書き残しておきたいという思いがあります。
(今、「失敗」とおっしゃいましたね。)
ええ。
中曽根康弘

原発事故の後、緊急に放送された池上さんの特番で、池上さんが「原子力推進を止めてはいけない」と言われていて、期待を裏切られたような気分に勝手になっていたのだが、その後原発に関する池上さんの論調も少しずつ変化してきているようではある。

新日本製鐵名誉会長である今井敬さんのお話では、岩井さんが言われていた「日本的経営」を見た気がする。

元新生銀行社長、八城政基さんのお話では逆に日本的,というかムラ社会的発想の非合理性が見えてくる。
アメリカ的というか純資本主義的発想の経済や社会での矛盾がむき出しになってしまった昨今であり、そこから昔ながらの日本的経済システムの見直しの機運もあるわけだが、かといって、以前のような終身雇用制度が当たり前、護送船団システム的な日本がいいとも決して思わない。なぜなら、総無責任社会を生み出してきたからだ。
学歴こそがものを言い、一度レールから外れたら生きていけない、という潜在的強迫観念に支配されるような社会は、ゾッとする。

(不良債権処理が上手くいかなかったことについての問いに対して)問題は、難しい問題に直面した時、決断をせず問題の先送りをする日本人の性格に起因すると思います。企業経営者、銀行の頭取は自分の任期中に問題を起こしたくないと考え、官僚もいろいろ面倒なことが起こると考える傾向が強かった。解決を先延ばしし、そのうちに時間が解決してくれると考える傾向が強かった。
八城政基

「塩爺」こと塩川正十郎さん。

今から思えば、それでも1990年頃まではうまくいっていたんですなあ。ところが平成になってから、政治は国民が求める政策をきちんと実行せんようになりました。国民の将来を考えることよりも、ポピュリズムに傾いてしまった。

(日本の国力が他国に比べていかに落ちていたかがわかりますね。その原因はなんでしょうか?)
原因ははっきりしている。外需依存型の産業構造の転換が遅れたこと。そして技術や製品の優位性が徐々に薄れてしまったことに尽きます。
(政府は、経済をなんとかよくしようと赤字財政になってでも、国債をどんどん発行しましたね。)
それや。それがあかんかった。それをやり続けたあげく、2012(平成24)年度末には国と地方の長期債務残高は合計940兆円に達する見込みです。対GDP比で196%ですよ。この数字、太平洋戦争末期の水準だと言ったら、いくらなんでも、少しはゾッとしてくれるかもしれませんな。
塩川正十郎

各インタビューに先立ち、池上さんが経済についての簡単なエッセイを冒頭に書かれている。
経済とはいかなるものか、読みやすく書かれている。

私がいつも思うのは、経済を知ることは、人が何のために働くのかを考えることにつながるということです。
私たちは、働くことによって自分の存在価値を確認しています。労働はある種の自己実現でもあるし、労働を通してこそ、私たちは世の中のために自分が役立っているという実感を得ることができます。
池上彰

個人的には、「労働」を「コミュニケーション」と置き換えて読み解くことをお勧めする。
経済とはコミュニケーションなり

労働は、私たちが幸せになるための一つの手段である。
もし労働が私たちを不幸にするのであれば、その労働はいったい何の意味があるのだろうか。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

↓