沸騰都市ダッカとエンデの遺言

22日の「NHKスペシャル 沸騰都市第3回ダッカ」をご覧になった方も多いかと思います。 ブログを検索してみると、沢山の方が記事を書いていらっしゃいます。 簡単に内容を説明すると、

世界最貧国のひとつに数えられてきたバングラデシュが、目覚しい経済成長を遂げている。年5パーセントを超える経済成長を持続し、BRICsに続く有力新興国「NEXT11」にも選ばれた。政府は十分に機能せず、輸出できるような天然資源もなく、外資にもほとんど頼れないこの国が、なぜここまで急速な発展を遂げたのか。 その原動力となっているのは、貧困層の劇的な所得の向上である。この10年で全人口に占める貧困層の割合は10パーセント以上減少した。貧困層が知恵を振りしぼり、ひとりひとりが言わば起業家となって、自力で豊かさを手にしようとする動きが始まっている。 その助けとなっているのが、無担保で少額を融資するマイクロクレジットである。グラミン銀行がノーベル平和賞を受賞、一躍脚光を浴びたが、それに先んじて始めたのが世界最大級のNGO・BRACである。 BRACは首都ダッカを拠点に、スラムに住む貧困層、繊維工場を操業する中間層に向けて積極的な無担保融資を展開してきた。その基本姿勢は、「貧困層に必要なものは援助ではない。投資である」。従来のNGOのあり方を大きく覆すものだった。 BRACが模索する新たな貧困解消の試みと自らの力で貧困から抜け出そうとする人々の物語を描く。

NHKホームページより) マイクロクレジットとは、一体いくらの融資をいうのか。
番組で紹介されていたスラムの女性たちは、5000円、13000円、というお金を15%という金利でブラック銀行から借り入れて、生活用品を販売したり、生地とミシンを買い付けて商売をされていました。
またある起業家は、子供の頃に貧しい村からダッカに移り住み、裁縫工場で働き30歳を過ぎてブラック銀行から80万円の融資を元に新しく工場を立ち上げていました。 皆さん、一様に明るい将来に瞳を輝かせて、「いつかは日本より上になるよ!」と力強くマイクに語りかけていた姿が印象的でした。

「マイクロ」という表現は、私たち先進国あるいはバングラデッシュの富裕層からみたお金の価値であって、決して当事者の視線ではありません。15%の金利も、現地の他の業者の5分の1だそうです。

僕はこの15%という数字を聞いて、正直驚きました。 10年ほど前、独立資金を国金から融資を受けましたが、その時の年利が2.3%でした。 15%という金利は、日本で言えばサラ金です。

このNGO団体、BRAC銀行及びマイクロクレジットが貧困会消の画期的なシステムとして話題になっています。 発案者ムハマド・ユヌスさんはノーベル平和賞を受賞されています。 確かに、貧困解消の即効薬として機能しているといえるでしょう。 しかし、少し視点を変えてみると違った見方も出て来ます。

番組中、新しいミシン工場では中東産油国やアメリカ向けの服などの注文に追われていました。 ちなみに行員の初任給は2500円。ミシンをマスターすると800円上積みされるそうです。 ということは、私たち先進国に安くて質も良い(はず)の製品が輸入されてくる、ということです。
このことは私たちの普段の生活にとって一見利益があるようにも見えますが、私たちの仕事を海外の人達に譲っていることも意味します。 つまり、先進国での失業率の増加の一因となります。

ブラック銀行も、決して慈善事業を行っている訳ではありません。 彼らに「マイクロな」お金を貸し付けることによって金利を得ています。 それが莫大な資金となっています。
無担保でも貸し付ける、とはいっても5人組と言われる連帯保証人が必要です。 もし、返済出来なかった場合は、連帯保証人が弁済しなければなりません。

また、99.5%の返済率だそうですが、0.5%の出来ない人達がいるのも事実です。
おそらく、今後も同様な成長を続けるならば、融資額も「マイクロ」ではなくなり、返済率の低下も招くでしょう。

投資家や商品をグローバルに流通させている業者にとっては、成長の幅が少なくなった先進国の労働者から、発展途上国の貧民層にわずかな資金を貸し付けることで、安い労働力の掘り起こしを図っている、と見るのは穿った見方でしょうか。
「プラスの利子」がある以上、貨幣が腐りも減りもしない以上、いずれ先進国のような金融恐慌を引き起こすようになるでしょう。 現在の資本主義のシステムである以上、お金はお金があるところに集まるようになっているのです。 一時的には、バングラデッシュの方々を潤すことになるかもしれませんが、いずれそのお金は再び集められるのです。

またバングラデッシュは深刻なヒ素汚染でも有名なところです。 産業が発展するにつれ、大都市固有の問題や環境問題も避けては通れないでしょう。 「エンデの遺言」たまたまこの時期に読んでいたので、ついそのような考えを持ってしまいました。

明るい未来を夢見て目を輝かす女性たちを見ていてこのように考えるのは心苦しいのですが、願わくばバングラデッシュの方々と共に、幸福な地球にしていきたいと思います。

「沸騰都市ダッカとエンデの遺言」への2件のフィードバック

  1. ブラックの支所で持参の弁当を食べ、農協って感じた。しかしバンコクの空港周辺にしろ、ATMが人の集まるところには見受けられ、搾取の構図というのは経済力より先んじて網張って待ち受けているのかなと推測した。

  2. >りんたろうさん
    日本などの場合は、今ほど複雑かつ高度な金融システムがありませんでした。いわば経済成長とともに、金融システムも怪物化していった訳です。

    しかし、現在の発展途上国が今後経済成長を遂げるときには、既にいるその怪物と共にあるわけです。

    これはよく考えてみると、空恐ろしいことではありますね。

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