はてしない物語/ミヒャエル・エンデ

はてしない物語

僕が中学生の頃、大ヒットした映画「ネバーエンディング・ストーリー」の原作です。
当時、映画を見て正直ガッカリした記憶があります。
そのため、その後30年間、エンデの本とは縁がありませんでした。

映画では、人の想像力がファンタージェンを産み出し、現代の人々の想像力が失われているためファンタージェンが“虚”に覆われてしまう危機を描いた形になっています。

しかし、原作では似て非なるもの、確かに前半は映画と似たストーリーが進みますが、まず持ってその哲学のベクトルは全く違います。

物語の前半、本が好きだけどデブでいじめられっこのバスチアンが、不思議な本と出会いファンタージェンの危機に巻き込まれていきます。
そして後半は、ファンタージェンの世界にバスチアンが行き、そこの創造主、神としてのバスチアンが描かれています。

自分が突然あらゆる権力を持つ、いや自分が望んだとおりに世界が変わるとしたらどうなるか?

ここに非常に興味深いテーマが盛り込まれています。
バスチアンは、自分が作り出した世界で思うとおりにしていきますが、浅はかな欲望の故に次第に自分のクビを絞めることになってしまいます。
自利は言うまでもなく、他人によかれと思ってしたことさえも自分が望んだ結果とはなりません。

為政者なり、この世を動かしている人達がいるとしたら、彼らへの警告とも受け取れます。

また別の視点から見てみると、自分の妄想の世界と現実の世界をしっかり区別しなくてはならない、という風にもとれます。
現代の、ヴァーチャルな世界がここまで広まり、夢と現実がごちゃ混ぜになってしまったような事件が頻繁に起こっている状況を見ると、エンデの先見性に驚かされます。

このように、子供にとっては純粋に冒険物語として、大人にとっては様々な示唆に富んだ本、と言えます。
映画を見てそれっきりの方にも、ぜひお薦めしたいですね。

コメントする

CAPTCHA


 

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください