「原発ゼロで日本経済は再生する」吉原 毅

「脱原発宣言」で有名になった城南信用金庫の理事長、吉原毅氏の新著です。
タイトルからすると、いかにも「原発ゼロにした方が経済再生には有効だ」ということが書いてあるような印象を受けますが(確かに書いてはある)、それよりも僕には「一般の銀行と信用金庫の違い」を知り得たことの方が大きかったです。

恥ずかしながらこの年まで知らなかったのですが、信用金庫のことを「規模の小さい銀行」くらいに思っていました。
ところが、法人のあり方からして違うのですね。銀行は「株式会社組織の営利法人」であり、信用金庫は「会員出資の協同組合組織の非営利法人」だそうです。
つまり銀行は株主の配当のための利益追求をするという意味では普通の会社と変わらない、ということであり、逆に信用金庫は会員の相互助け合いの精神の下に資金を融通し合う組織、ということです。
なるほど。
だから「脱原発宣言」も出来た訳ですね。

お断りしておくと、当サイトの立場は「脱原発100%」です。

本書はつまるところ「金融機関の役割」を説明しようと試みられた物、と言えそうです。
第2章「なぜ信用金庫が脱原発宣言か」では、「企業の社会的責任(CSR)」という言葉を改めて見つめ直した、と吉原さんは書かれています。
CSRを実行しようとすると、株式会社であれば自ずと「株主の配当に影響がない範囲」に限られます。
しかし、信用組合であれば会員の利益(配当ではなく、多くの場合会員およびその家族の生活そのものに対して、でしょう)になると判断されれば実行されやすい、ということです。

第5章「近代社会の思い上がりとお金の暴走」第6章「原発と拝金主義の奇妙なつながり」と続いて行きます。

僕は普段から資本主義の終焉を見据えて、そのときに備え「お金への思い込みからの脱却」と「自分たちの生活を守るための地域通貨制度の創設」を目指して活動していますが、地域通貨を実際に運用する際に、この信用金庫の精神は大いに参考になると思います。
その受け皿が、任意団体を新たに作るのか、商工会が母体となるのか、役場行政が適切なのか、という問題は今後の課題です。

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