農業手法の大転換で省エネルギーを実現

 

Mason Inman

for National Geographic News

May 4, 2010

1食分の食料生産で消費される燃料は意外と多い。もしかすると、その食事の摂取エネルギー量をはるかに上回るか もしれない。

ア メリカの食料生産システムでは、農地の食材料1カロリー分が食卓に届くまで10カロリーの化石燃料を消費するといわれる。ところが2010年5月 3日発行「Agronomy Journal」誌5/6月号で発表された研究結果によれば、実はそれほど多くは必要ないという。

アイオワ州立大学チームが行った6年間の研究は、化石燃料消費を削減しながら豊富な収穫量を維持し、農家は利益も出せると結論づけている。

同チームはアイオワ州の農場で、コーンベルト地帯の二大作物、トウモロコシと大豆のほか、エンバクやムラサキウマゴヤシなどを輪作作物に追加するテスト を行った。その結果、作物の種類を増やすと、合成肥料や除草剤の使用量が大幅に減った。どちらも通常は天然ガスから生成されている。

ポイントの1つはムラサキウマゴヤシにある。空気中の窒素を土壌に取り込むという役割を果たすのだ。ムラサキウマゴヤシの栽培地では、合成肥料の使用量 が4分の1程度に減少した。

アメリカの農家の多くは、トウモロコシと大豆を隔年栽培するという2年サイクルの輪作が習慣化しており、すぐには馴染めないかもしれない。

アイオワ州立大学の農学教授マット・リーブマン氏と研究チームは、輪作サイクルを4年に変更すれば、化石燃料の使用量を半減できると実証した。従来のト ウモロコシと大豆の輪作に、エンバクなどの穀物とムラサキウマゴヤシやマメ科植物をそれぞれ1年間割り込ませるのだ。

このような4年サイクルの農地は、省エネルギーを実現すると同時に、収穫量と利益もほとんど変わらなかった。「この方法ならトウモロコシの生産量と農家 の収入を両立できる」とリーブマン氏は話している。

4年サイクルには、綿密な計画と実施、また家畜も要件となる。研究チームはトウモロコシやエンバク、ムラサキウマゴヤシの牧草を牛に与え、その糞を農地 にまいた。作物が必要とするカリウムやリンを合成肥料の代わりに供給し、化石燃料の節約に繋がったのだ。

ただし、労働力が倍に増える欠点もある。リーブマン氏はこの点について、「トラクターの運転や牧草の収穫に時間がかかるんだ。こういった手間仕事はすべ て機械で行うこともできる」と述べている。

カナダのオンタリオ州にあるグエルフ大学で農作物を研究する科学者ビル・ディーン氏によると、複合的な輪作には化石燃料の節約以外にも、多くの利点 があるという。「土壌の有機物量が増えるので、浸食を減らすことができる」と同氏は説明している。

一方で、同氏は導入には困難もあると指摘している。「複合的な輪作は理想的だが、市場を考えると簡単ではない。ムラサキウマゴヤシなどの作物は需要が少 ないからだ」。

リーブマン氏率いる研究チームは、アイオワ州の農場で伝統的に両立していた農業と畜産業の歴史に言及している。しかし、低いエネルギー価格と高い労働コ ストのため、トウモロコシと大豆の2年間の輪作に転換が進んだという。

ただし農家は、石油価格が上昇すれば化石燃料に頼る方法は高コストになると気づき始めている。また、化石燃料の価格を左右する地球温暖化に関する政策に も注目している。 研究チームは、「化石燃料の価格が上昇しても作物市況が変わらない状況になれば、複合的な輪作システムに転換する十分な理由となるだろう。化石燃料が高額 になるにつれ、従来の利点は薄れていくはずだ」と主張している。

Photograph by John Stanmeyer, VII/National Geographic

編集長より;正直なところ、どうしてもっと早くこういう研究結果が出てこなかったのか、という思いです。

どちらにしろ、世界の食料庫となったアメリカ一辺倒で頼る訳には行きません。食料のグローバル化はさけなければならないし、我々の死活問題です。

そういう意味では、私が子供だった30年前から社会の授業で教えられて来た、日本の自給率の問題を長年放置して来た自民党政権の功罪はとてつもなく大きいものです。それは、もしかしてワザとしているのか、と勘ぐりたくもなるものです。
だって、日本を滅ぼそうとすれば、海上封鎖だけで済み、原爆などいらないのですから。

そういった政治などに惑わされず、最近では自給生活を目指して田舎に移り住み畑を自ら耕す若者が増えていることは、明るい未来への希望の光です。

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