「九州電力のメガソーラー・大牟田発電所、15日に着工」を別の視点から考えてみる

中川修治さんからのメールより。

 

九州電力は12日、福岡県大牟田市で計画中のメガソーラー(大規模太陽光発電システム)大牟田発電所が15日に着工すると発表した。同社の港発電所跡地(敷地面積=約8万平方メートル)に開発、出力は3千キロワット。営業運転開始は10年11月の予定で、完成すれば九州最大のメガソーラーとなる。年間の発電電力量は約320万キロワット時を想定、一般家庭約2200世帯の昼間時間帯(午前7時~午後6時)の年間使用電力量に相当するという。総事業費はおよそ18億円で、国の地域新エネルギー等導入促進対策事業による補助も受ける。

http://www.shimbun.denki.or.jp/backnum/news/20100113.html

 

これについて

 

電力会社がやるべきプロジェクトではないのでは? 大牟田メガソーラー

中川修治2008/08/31
太陽光発電など自然エネルギーは、発電を小規模にして分散させ、電力会社が妥当な価格で電力を買い取ってこそ効力を発する。大規模に発電しようと言う「メガソーラ-」は、発想の根本がまったく間違っている。国や九州電力、宮崎県などは構想を再考すべきだ。 温暖化対策「福田ビジョン」の発表以来、注目を集めている太陽光発電に、メガソーラーなどという「見掛けだけで大きなものがいい」と言う旧来の発想から来た代物がある。  メガソーラーは、前の経産大臣の発言から業界が過剰反応して「できる、できる」と言う。九州電力も横並びに合わせてきている。さて、このニュースどう読むべきか……。  「九州最大の太陽光発電、九電が大牟田・港発電所跡に建設」

【九州電力は25日、福岡県大牟田市の港発電所跡地に、同社初の大規模な太陽光発電設備(メガソーラー)を建設すると発表した。出力は3000キロ・ワットで、九州地区の太陽光発電では最大規模になる。来年秋に着工し、2010年度の運転開始を予定している。
 4年前に廃止となった石炭火力の港発電所(出力15万6000キロ・ワット)の跡地約7ヘクタールに、1畳分の大きさの太陽電池パネルを1万5000~3万枚設置する。総事業費は20億円台半ばの見込み。年間発電量は約315万キロ・ワット時で、昼間の出力ベースでみると一般家庭2200世帯分の電力を賄う。 太陽光発電は原子力発電や水力発電と同様、発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しないクリーンエネルギーとされる。出力3000キロ・ワットの太陽光発電によるCO2排出抑制効果は年間約1300トンと、一般家庭200世帯分の排出量に相当するという。
 九電は、九州地区に現在導入されている30万キロ・ワットの太陽光発電を10年以内に100万キロ・ワットに拡大する目標を掲げており、今回のメガソーラー開発もその一環となる(以下、略)】(2008年8月26日読売新聞)
 この20億円台半ばという数字、他では総事業費25億円といわれているので、規模からみると設備費は1Kwにつき83万円程度。これは一般家庭向けでの市場価格60万円台からみると1Kwあたりで見れば20万円も高い。
 つまり、発電原価で計算すると10~15円程度は高い。ならば、資金効率からみれば、一般家庭用に25億円かけて設置する方が余程、社会全体としては資金効率が良いという事になる。
 で、電力会社が自己資金でやると言ってもそれで利益を出すわけだし、電力会社の電力供給は地域独占だから、必ず、費用は九州の全電力需要家に支払わせることになる訳だ。1Kwhあたり10~15円も高い電気を作って、それを全九州全体の電力の需要家に負担させようという事になる。「全体から見れば小さいからいい」と言う話ではない。
 ならば25億円で、現在、25円程度でしか買っていない太陽光発電からの電力を、1KWhにつき20円余分に支払うほうが、15円も発電原価の低い電力を購入することができるわけだ。その方が経済的にも合理的であるし、九州電力の全電力需要家にとっての利益にもなる。
 それに、今まで発電原価をはるかに割る価格でしか売れなかった人たちの太陽光電力が正当に評価されることにもなるし、多くの電力需要家が電力の生産にも関わって、それが需要地に怒れることで系統の安定化にも役立って、未来の、エネルギーを含めた資源分散型社会を支えるようにもなるだろう。
 そもそも天候によって不安定といわれる太陽光発電を、こうして一ヵ所にまとめると、その影響自体がもっと系統全体への撹乱要因になる訳だ。ここに雲がかかったら1時に出力3000Kwがその10分の1とかになる訳だから随分、不安定になるだろう。なのに九州電力は、今後もメガソーラーに取り組むという……。
 一体今まで、一般の人たちが導入するのにどれほど難癖をつけて「そうした不安定な電源の電気の価値は4円程度だ」と言ってきたのだ。それをさらに、集中させて不安定にして系統に入れると言う。こんな理不尽な話はない。
 経営陣の再考を望みたい。

追記:
 宮崎県の東国原知事がメガソーラーの誘致に熱心だが、これも違う。県民が出資をして作る発電システムから生み出される電力(小規模分散)を、九電に合理的な価格で買うように求める方が、県民のためにもなるのだから……そうした建設的で誰もが利益を得られる提案を行ってほしいものだ。

http://www.news.janjan.jp/business/0808/0808265608/1.php

 

電気事業連合会の「メガソーラー発電と電気自動車の導入計画」の問題点

中川修治 2008/09/23
電力7社による電力の業界団体、電気事業連合会が怪しげな構想をぶち上げた。「電気自動車を1万台導入する」というのは、別に環境に良いことをしよう、などと言うのではない。メガソーラーにいたっては電力会社のやるべきこととは思えない。まず、現状、安く買い叩いている太陽光発電の購入価格を適正にすべきだ。 

何も知らない昔なら、「いやあ電力会社も良いことするのですね、方向を変えるんだ」と喜んだかもしれませんが、ちょっと事情が分かった今では、「人を馬鹿にするにも程があるだろう」と、呆れはててしまうような計画です。
 電気事業連合会(電事連)は電力7社による電力の業界団体です。この19日に行われた会長の定例記者会見で「メガソーラー発電と電気自動車の導入計画」というものを発表しました。ちなみに電事連は、2007年の米国大リーグ優勝決定戦で、日本向けのプルサーマル推進の「広告」を出していた団体です(関連記事)
 「メガソーラー発電と電気自動車の導入計画」について、毎日新聞は「電気事業連合会は19日、地球温暖化対策の一環として2020年度までの太陽光発電と電気自動車の導入計画を発表した。電力10社合計で太陽光の発電能力を14万キロワットに引き上げるほか、業務用車両として電気自動車を1万台導入するのが目標で、いずれも現状より30倍程度に増強するとしている。
 太陽光の発電能力は07年度末で4250キロワット。導入計画ではまず、09年度までに計4万キロワット程度のメガソーラー発電(太陽光で発電能力1000キロワット超)設備の建設に着手する。20年度に14万キロワット態勢にすることで、約4万世帯分の電気使用量を賄う。【谷川貴史】」(事連:太陽光発電と電気自動車を30倍に…環境計画)と報じました。
 一見、自然エネルギーへの取り組みとしては前向きに見えるのですが、内実は決してそうではないのです。
 もともとメガソーラーというのはドイツなどで施行されたFIT(固定価格買い取り制度)で「規模の経済が効く」と言う事で、大量に太陽電池を購入し広い場所で一気に発電所が造られたことで、目を引いたのです。何を勘違いしたのか、日本の経産省の某大臣(当時)が「私が命令して世界一のソーラー発電所を作らせようと考えている」と国会で発言したのを受けて、電力会社が「何かしてみせねば」ということで始まったのです。
 電力会社のやるメガソーラーは実にお高く資金効率が悪いのです(関連記事)。呆れたことに海外では規模の経済が効いて1kWh当たりの経済効率が小規模のものより良い筈のメガクラスのものが、日本では高くついているのです。
 「電力会社がやるべきプロジェクトではないのでは? 大牟田メガソーラー」で紹介した、大牟田のプロジェクトでは1kWあたり83万円ですから、一般家庭用に比べれば20万円は高いので、発電原価もそれだけ高くなります。
 一般家庭用なら45円/kWh程度のものが、60円/kWh程度になる訳です。そして、これが回り回ってみなさんが支払っている電力料金に反映されるのです。良く電力会社が「自分たちの負担で」と言いますが、つまり、それは全ての電力需要家が支払う電気料金によるのだ、と言う事なのです。
 ならば、太陽光発電を一般の方々にやってもらって、その方々にまともな発電原価45円/kWhを支払う方が、電気料金に反映される原価も安いので、電気料金もリーズナブルな価格となる、ということになります。
 現在はそのまともな発電原価すら支払わず、たったの25円程度しか支払っていないのですから、お話にもなりません。まず、こうした阿呆なメガソーラーなどと言うものに金をかけるぐらいならまず、まっとうな電気代をこれまでに設置されている太陽光発電事業者に支払うべきでしょう。
 さて、次に電気自動車の導入についてみてみましょう。これは、原子力によってあまってしまう夜間電力の需要を増やしたい、と言う事でしょう。原子力発電は、ほかの発電と比べてオン・オフが容易ではないので、世の中の電力消費量が減る夜間にも発電を続けます。夜間は今でも、どうしても電力供給があまってしまい、各電力会社は何としても夜、電気を使って欲しいのです。
 何しろ「原子力立国」という、経産省・資源エネ庁の官僚の天下り先を確保するためにも必要とされている、国策の原子力推進の方針でさらに原子力の比率が上がると、揚水発電やオール電化やエコキュートなどでは吸収できないとんでもない夜間電力の余剰が、さらに発生するのです。
 これは如何ともしがたいのです。自由化の進む欧州みたいに、買ってくれるならダンピングしてでも買ってくれと言えば、夜間に火力発電所を休止したい国々は買うでしょうけど、島国の日本では国内で余った電力は海外に売れませんから、全部、国内で消化しないといけなくなる。
 で、「電気自動車にしてしまえば」ということなのでしょう。見掛け上、ガソリンとかの化石燃料の高騰と環境問題が追い風になっているから、この機会に国からの補助金という形での予算も出るだろうし、これ幸いとこの構想をぶち上げたと言うところでしょう。
 これは、別に環境に良いことをしよう、などと言うのではない訳です。そこを私たちは読み違えないようにしなければなりません。

http://www.news.janjan.jp/business/0809/0809217763/1.php

 

編集長より:電力会社はあくまで公共団体ではなく利益追求組織であり、しかし我々には電力を買う相手を選べない、というのが問題なのですね。この場合、普通であれば公正取引委員会の出番でしょう。

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