日本の農業
TPP参加で本当にダメになる?
「今月13~14日に横浜で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議。この場で議題となる環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への参加検討を菅首相が表明すると、農業セクターへの影響を懸念した反対の声が相次ぎ、国内は混乱を極めている。1年以上前から日本のTPP入りを支持し、かつて日本・メキシコ経済連携協定(EPA)交渉にも深く関わった、慶應義塾大学総合政策学部・渡邊頼純教授に、このTPP参加の是非を巡る議論のポイントとなる、農業と自由化についてインタビューした。」
だそうです。
BSEの一件以降、牛肉マーケットは豚肉に押され気味です。ですから、牛肉全体の消費を上げることを目標とし、かつマーケットの中で差別化を図っていくのが自然だと思います。例えば所得に応じて、アッパーマーケット向けには和牛、一方で学校給食や牛丼チェーン店などには外国産の良質で低価格なものを、といったようなことです。
和牛とオーストラリア産の肉では、食味・食感がかなり違いますので、価格の問題も然ることながら、マーケットの中で住み分けが可能ですし、すでに住み分けができていると思われます。そういった観点からも、38.5%という高関税で日本の畜産業を守る必要があるのかどうか、疑問が残ります。
要するに大量に使用するところは外国産、高級和牛肉は国内向け、ということか。
まずもって“所得に応じて”と言っているところが、既に差別的で気になります。あくまで感情的なものですが。
また、数年前に和牛の種牛がアメリカに渡り、既にオーストラリア牛と和牛の区別の無くなってきているという事実を知らない、ということに驚きです。
しかし、ウルグアイラウンド(UR)によってコメの輸入が部分開放された際、6兆円という大きな額が対策費として支出されましたが、それによって日本の農業が強くなったかというと、今日まったくそうはなっていません。広域農道の建築など、公共事業に費やしてしまい、農業の集約化・大規模化には繋がらなかった。ですから、補償金を出せばよいわけではない。まずは1戸あたりの耕作面積を広げ、大規模化・効率化していくことが、日本の農業を強くするには必要な戦略です。
日本の国土で、集約化・大規模化を目指すことは国土を荒らすことはあっても発展することはないように思います。
自然の仕組みも考えた、ホリスティックな施策でなければこれまでと同様の過ちを繰り返すだけでしょう。
アメリカのように広大な土地ではない日本で、集約化・大規模化を図れば天災等による被害は甚大なものになるでしょう。
しかし、小規模・多角化した農業であれば、被害も最小に抑えられるはずです。
食料問題を、国家のリスク管理の大きな柱と考えれば自ずと出てくる結論でしょう。
昔は、焼酎は安価でブルーカラーの飲み物でした。しかし今では、カクテルに使われるなど若者たちに人気ですし、なかなか手に入らないプレミアムがついたものもあるくらいです。欧米から訴えられ、敗北し、窮地に立たされた焼酎業界が、知恵をしぼって今日までブランド力強化に努めてきたわけです。「負けるが勝ち」という言い方が正しいかは分かりませんが、競争にさらされてこそ強くなれるのだと思います。
付加価値の付けやすい加工製品と原料である農産物を同列に語る思考回路には、あきれてしまいます。本当に教授?なのでしょうか。
品種改良に何年もかかる農業を全く知らないのでは?
まず「食の安全神話」について。日本の消費者は「国産=安全、外国産=危険」という安直な印象を持ちがちですが、実際にそうとは限りません。例えば、メキシコの養豚業は、人里離れた砂漠で行われているのですが、日本では土地がないため狭い場所で豚を育てています。豚は人間から病気をもらいやすく、そのため日本の豚の餌には抗生物質を混ぜているのですが、メキシコではそのようなことはありません。他方、輸入農産品についてはポストハーベスト農薬が使用されているという指摘もあり、国産と外国産についてどちらが安全だ、危険だ、と簡単に言い切ることはできないと思うのです。
ついこの間、豚から人へ感染し、世界を震撼させた新型インフルエンザがまさしくメキシコから流行した、ということはすっかりお忘れのようです。
もちろん、これは話の筋が違うように感じられますが、人間が必要以上に肉食をしているために起こる悲劇、という意味では同じです。
ほども少し出ましたが、やはり農地の集約化・農家の大規模化です。現行の民主党の戸別所得補償制度ではそれが進みませんので、もっと選別的に補助金を出さねばなりません。農業政策には、産業政策と社会政策の2つの視点が必要です。前者は、農業を産業として位置付け、戦略的に投資をし、消費者の嗜好を考慮して作物を作っていき、大規模化・効率化を追求していく、ということです。後者は、零細農家や兼業農家などに土地を放出していただき、それを専業農家に譲渡するなり貸すなりして、大規模化を進める。同時に土地を手放した彼らの老後の保障などはもちろん必要なので、そこは生産とは切り離して(デカップリング)行う必要があります。かつては手厚い農業保護が行われていたEUでも、そのようなやり方で、1992年以降「強い農業」へと変わってきました。同じくオーストラリア・ニュージーランドでも、イギリスという特恵的なマーケットが、1973年の(イギリスの)EC加盟によって失われることになり、これをきっかけとして、それまでの保護主義的な農業を見直し、効率的な農業を模索してきました。その結果、今日高い競争力を誇っています。日本も、TPP参加をきっかけに、国民的議論を深め、戦略的な「強い農業」を目指していくべきです。
根本的に抜け落ちているのは、これまでと同様に安価に物が世界を流通する、原油価格はそれほど上がらないという前提での話であること。
自然生態系を全く考慮していない、前時代的な資本の流れだけを取り上げた農業の話であること。
これからも、日本が“先進国”であり、為替市場でもある程度優位を保ち続ける前提にあること。
このうちどれひとつとってみても、現在確かなものはないように思います。